ごみを減らして、暮らしを豊かに
廃棄物が発生するのを抑制することは、実は暮らしを豊かにすることにもつながると井出さんは指摘します。
「例えば、東京都世田谷区の場合、コンビニエンスストアやスーパーの売れ残り食品である事業系一般廃棄物の1㎏のごみ処理には55円の費用がかかっています。自治体の財源はほぼ一定ですから、ごみ処理にかかる費用を減らす分、教育や福祉などに使える予算が増やせるのです。そして、コンビニエンスストアなどで出されるごみは、事業者もコスト負担する一方、事業系一般ごみとして税金で処理されています。小売店などで無駄に廃棄される食品を減らすことが、税金の有用な使い道につながるのです」
「実はスーパーやコンビニエンスストアなどでは、3分の1ルールという商習慣によって大量の食品ロスが出ています。製造日から賞味期限までの期間全体の3分の2に『販売期限』を設け、そこに達すると、まだ3分の1の期間が残っているのに棚から撤去するという暗黙のルールがあるのです。棚の奥から1日でも日付けの新しいものをと買い求めがちですが、その結果、まだ賞味期限には余裕があるのに販売期限を過ぎたものが、税金を使って廃棄されることになります」
「家族構成や食習慣で消費のスピードはそれぞれ異なります。たくさん買っても使い切れずに捨ててしまっては意味がありません。また、陳列棚の奥に置いてある賞味期限の長い商品からついつい取ってしまいがちですが、賞味期限が短い手前の商品は3分の1ルールによって廃棄されることが多いのです。買い物をするときは無理のない範囲で食べ切れる量を見極め、できるだけ棚の手前に置かれた商品から買うようにしたいものです」