普段、何気なく使っている水や電気、ガスなどのエネルギーは、地球環境とつながっています。暮らしのなかの無駄遣いを減らすことが、地球規模で進行している環境問題を改善する大きな力となるのです。「料理を通して、食生活のなかにある大切にしたいものを伝えていきたい」という料理研究家の行長万里さんに、環境にやさしいエコな暮らしのために、毎日の生活でできることについてお聞きしました。
定位置管理で使い切れる量だけ買う
まだ食べられる食品を使い切れずに廃棄する食品ロスを出さないために、まず見直したいのが買い物の仕方です。 「店頭で特売品を見ると、ついでだから買っておこうという誘惑にかられますが、本当に必要かしら、使い切れるかしらと立ち止まって考えることを心がけてみてください」
例えば、4個パックのものを400円で購入して、1個を使い切れずに処分したら、3個を400円で購入したのと同じことになってしまいます。それよりは、バラ売りの1個120円を購入した方が無駄なく使い切ることができ、家計にも環境にも負担が少なくなります。
「冷蔵庫では食品が迷子になりがちです。食品ごとに庫内の定位置を決めて、そこに収まる量だけを買うようにすると管理がしやすくなります。また、買い物の予算を決めていく、ショッピングバッグに入る量だけにするなど、自分で上限を設けてもいいですね。あえて買い物に行かない日を設けて、あるものだけで調理すると意外なアイデアメニューが生まれたりすることもあります」
暮らしのエコも一緒に考えて
食品ロスだけでなく、エネルギーロスを減らすことで環境にやさしい暮らしができます。
「調理を始める前に鍋の底についている水滴を拭くだけで、湯が沸くまでの時間が違ってきます。煮物のときには落としぶたをすると対流で味が全体に回るのでおいしく仕上がり、しかも時短になるのでエネルギーロスも減らせます。ご飯は炊飯器で保温し続けるよりも、熱いうちに1膳分ずつラップに包んで冷凍し、食べるときに電子レンジで加熱した方が省エネになるし、炊き立ての状態に近いおいしさを味わうことができます」
実は、生活習慣をちょっと見直すことでできるエコもたくさんあります。家庭で消費するエネルギーの半分以上が暖房と給湯によるものです。「例えば、入浴はなるべく家族が続けて入ることで沸かし直しなどのエネルギーが減らせますし、自分の部屋にこもって過ごすよりも、みんながリビングで過ごすようにすることで冷暖房や照明などの消費電力が減らせます。節約しながら家族の団らんにもつながるエコ生活を始めてみてはいかがでしょう」
お話を伺ったのは
行長 万里さん
料理研究家。女子栄養短期大学卒業。料理学校の助手を務めた後、フリーで活動開始。料理教室講師やテレビ番組のフードコーディネーターとして活躍。1994年からイタリアに料理留学。『給料前のピンチを救う50円料理』(日テレムック)を出版。累計55万部。捨てる前に考える、使い方、使いまわし、食べ切り方法を提案し食品ロスに関する講演、料理教室を全国で展開中。
2019年4月