CO2削減(TCFD提言への対応)
昨今、気候変動が社会、企業活動に与える影響は非常に大きくなっています。昭和産業グループは「穀物ソリューション・カンパニー」として、大地の恵みである穀物を多種多量に扱っており、特に気候変動は社会が直面し、対応が急務である重要な課題の一つとして認識しています。当社グループは、TCFD提言に沿って「ガバナンス」、「戦略」、「リスク管理」、「指標と目標」の4項目の情報開示を進め、ステークホルダーの皆様と積極的な対話を図っていきます。
1. ガバナンス
重要な気候関連の「リスク」及び「機会」を特定し、適切にマネジメントするために、代表取締役社長執行役員が委員長を務め全役員が委員またはオブザーバー、全部署長が委員となっているサステナビリティ委員会傘下の環境管理委員会に、専門委員会としてTCFD委員会を設置しております。TCFD委員会は、TCFD提言に基づくシナリオ分析を実施するとともに、関連する委員会やグループ会社各社と緊密に連携し、毎期それらの対応に関する計画を策定し、遂行状況については環境管理委員会に報告し承認を得ております。環境管理委員会はTCFD委員会の活動状況のモニタリングとともにグループ環境目標の進捗管理を実施しており、その結果はサステナビリティ委員会及び経営会議の承認を経て、取締役会に年1回以上報告しています。取締役会は当社グループの環境課題への対応及び実行した施策についての監督を行っております。
TCFDガバナンス体制

2. 戦略
当社グループはIPCC(気候変動に関する政府間パネル)で示されている気候変動のシナリオを参照し、その中から3つのシナリオ(1.5℃、2℃、4℃)について財務的影響及び事業戦略への影響を評価するとともに、気候関連リスク及び機会に対する当社グループの戦略のレジリエンスの確認と追加施策の必要性の検討を目的として、シナリオ分析を実施しております。
2021年度に当社グループのCO2排出量の約60%、水使用量の約90%を占め、環境負荷の最も大きい「糖質事業」※1を対象に、TCFDが提唱する気候変動の「リスク」と「機会」の選定、財務インパクトの定性・定量評価を開始しました。
2022年度は、2021年度に引き続き「糖質事業」の分析・評価を継続し、次に環境負荷が大きい「製油事業」※2についての分析・評価を行いました。 2023年度は、引き続き「糖質事業」「製油事業」の分析・評価を継続するとともに、「製粉事業」※3の分析・評価を行い、食品事業のグループ全体での気候変動に対する対応力向上を図りました。これにより、当該3事業で当社グループ全体のCO2排出量(Scope1・2)の約95%以上、水使用量の約100%(対応開始時に算出した2019年度の数値)について分析・評価を行ったことになりました。
当社のシナリオ分析にあたっては、TCFD委員会と各事業に関わる各部門やグループ会社が一体となり議論を行いました。(管理体制の詳細は「3.リスク管理」を参照)
2022年度までに実施した糖質事業及び製油事業の分析・評価で培った手順や手法を、当年度に実施した製粉事業の分析・評価に活用し複数の事業間やグループ会社間で情報を共有することで、本取り組みを当社グループのレジリエンスの強化にも繋げております。
- ※1 当社グループの報告セグメントである「食品事業」のうち、糖化製品、コーンスターチ、乳酸菌等の製品・サービスを取り扱う事業範囲を指します。
- ※2 当社グループの報告セグメントである「食品事業」のうち、業務用及び家庭用の食用油、大豆たん白、脱脂大豆、菜種粕、脱脂米ぬか等の製品・サービスを取り扱う事業範囲を指します。
- ※3 当社グループの報告セグメントである「食品事業」のうち、業務用及び家庭用の小麦粉、プレミックス、パスタ、ベーカリー類、ふすま等の製品・サービスを取り扱う事業範囲を指します。
シナリオ分析のステップ
- ステップ①
気候変動が当社グループにもたらす「リスク」と「機会」を特定し、事業に与えるインパクト(事業インパクト)をナラティブに表現。
- ステップ②
事業インパクトの大きさを軸に、「研究開発」「原料調達」「輸送・保管」「生産」「販売・マーケティング」「配送」のサプライチェーンの6項目それぞれに「リスク」と「機会」の重要度を優先順位付け。
- ステップ③
シナリオを定義し、ステップ②で抽出した重要度の高い「リスク」と「機会」を踏まえ、PEST分析や5forces分析等によりシナリオごとの当社グループの世界観を整理。
- ステップ④
社内外のデータを活用し、ステップ③の世界観も踏まえつつ事業インパクトを定量化し、気候変動が及ぼす影響を可視化。
- ステップ⑤
当社グループの「リスク」と「機会」に関する対応状況を整理し、中期経営計画等の事業戦略に反映すべく検討を継続中。
シナリオ分析の前提は、以下の通りです。
シナリオ① 2100年までの世界の平均気温が1.5℃/2℃程度の上昇に抑えられる将来予測
世界観: 世界規模でのカーボンニュートラルの達成に向けて低炭素化が強く推奨される
シナリオ② 2100年までの世界の平均気温が4℃以上上昇する将来予測
世界観: 気候変動対策への取り組みは現行の政策や規制以上の進展がなく、温室効果ガス排出量が増加している
対象事業: 当社グループの製粉事業、製油事業、糖質事業
対象年 : 2030年および2050年までの期間
3. リスク管理
TCFD委員会が特定した気候変動に関連する当社グループ全体の重要なリスクの評価及び対応計画については、「1.ガバナンス」に記載のとおり、取締役会に報告され監督を受けております。「1.ガバナンス」で記載した体制に加え、TCFD委員会は環境管理委員会内の環境4部会及び事業系戦略推進委員会と連携し、重要なリスク及び機会の特定を行います。また、サステナビリティ委員会傘下のリスクマネジメント委員会は全社のリスク管理を行う委員会であり、TCFD委員会で特定されたリスクの影響額と発生頻度の2軸からリスクをモニタリングし、リスク低減のためのPDCAサイクルと当社グループ全体の目標進捗を確認しております。
TCFD管理体制

4. 指標と目標
当社グループは、CO2排出量削減については2021年10月22日に決定した我が国の温室効果ガス削減目標が46%削減(地球温暖化対策推進本部)に合わせて、当社グループのCO2排出量削減目標を2030年度に2013年比46%削減に設定しています。
また、食品メーカーである当社グループとしましては、環境目標としてCO2排出量削減だけでなく、独自に「食品ロス発生量削減」「水使用量削減(原単位)」「容器包装材プラスチック使用量削減(原単位)」を目標設定しています。環境目標達成のためのさらなる施策の検討と取り組みを引き続き進めていきます。
環境目標への取り組みの詳細については、「環境負荷の低減」に紹介しています。
環境負荷の低減
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