日本はエコ先進国ってホント?

実は、日本はプラスチック大量消費国なんです!

今、世界の海でクジラやイルカ、ウミガメなどがプラスチックごみの犠牲になっています。日本でも2018年の夏、神奈川県鎌倉市の海岸にシロナガスクジラの赤ちゃんが打ち上げられ、胃の中からプラスチックごみが発見されました。

「UNEP(国連環境計画)によると、日本は一度で使い捨てされるプラスチック容器包装の1人当たりの廃棄量が世界で2番目に多く、まさに使い捨てプラスチックの大消費国になっているのです」

人口1人当たりの包装用プラスチックごみの量(2014年)
図7 日本の容器包装用のプラスチックごみの量は世界第2位。エコとは程遠いのが現状です。

川を通じて海に流れ込んだレジ袋やペットボトル、食品容器などは、海底ごみや漂着ごみ、マイクロプラスチックとなって存在し続けます。環境省の調査によれば、2016年に日本全国で回収した漂着ごみは約3万トン。最も多いのはプラスチックごみで、外国から流れ着いたものもありますが、多くは日本国内から出たプラスチックごみと見られています。

「海に流れ着く以前の川の段階で、相当数のマイクロプラスチックが流れていることが、2015~16年の東京理科大学の片岡智哉助教らの全国調査でも確認されています」

レジ袋の削減が本格スタート

こうした使い捨てプラスチックごみの一つがレジ袋です。日本国内のプラスチックごみの量は約900万トン、レジ袋はそのうち数十万トンを占め、年間使用量は約300億枚にのぼるといわれています。また、焼却すればCO2が発生し、その量は中程度のレジ袋1枚で約30g。乗用車が1km移動するときに排出するCO2量は150~200gといわれているので、レジ袋を7枚程度燃やせば同量のCO2が発生することになります。

「レジ袋の使用を減らすために買い物袋を持参しようという運動は、コープこうべが1978年に『買い物袋再利用活動』をスタートしたのをきっかけに、最近ではアパレル業界でも有料の紙袋に変え、袋を持参すれば特典を付けるなどの方法をとっています」

これまでは流通各社や自治体単位での取り組みでしたが、2020年7月からは全小売店でのプラスチックのレジ袋の有料化が始まります。

一人ひとりの意識が大切。一日も早く、一枚でも少なくする努力が必要です。

2008年から都道府県としては初めてレジ袋の有料化を実施した富山県によると、有料化以前は県内で年間約3億枚(推計)のレジ袋を使用していましたが、有料化実施から11年間で約15億7,000万枚のレジ袋の削減に成功。これを石油に換算するとドラム缶約14万本、CO2で約9万6,000トン、ごみにして約1万6,000トンを削減したことになります。

「この結果からもわかるように、レジ袋を減らせばプラスチックごみが減らせることは明らかです。買い物する際にマイバッグを使うことは、プラスチックごみを減らして海洋汚染を食い止め、地球環境を守ることにもつながるのです」

素材もデザインも豊富なエコバッグ。使い続けることが環境にも優しい生活を送ることに。

日本のリサイクル率は優等生?

日本の廃プラスチックのリサイクル率は86%といわれていますが、そのうちの58%が「サーマルリサイクル」と呼ばれるものです。サーマルリサイクルは、分離や選別が困難な廃プラスチックを固形燃料にしたり、焼却して熱エネルギーを回収する手法です。温水プールや暖房などの熱利用や発電などに利用されています。しかし、サーマルリサイクルは、焼却によって温室効果ガスであるCO2を排出する問題もあります。国際的にはリサイクルではなく「エネルギー回収」とみなされていることから、最近は日本でもサーマルリサイクルの利用割合は、廃プラスチックの"有効利用率"としています。つまり、日本のプラスチックリサイクル率の実態は27%で、全世界平均の14%より高いものの、ドイツの39%、スペインの37%、イギリスの32%、イタリアの29%と比べると、やや低い水準になっています。今後ますます深刻化する地球温暖化を含めた視点から考えても見直したい点です。
※プラスチックの全世界平均リサイクル率はUNEP報告書から引用

日本のプラスチックリサイクルの内訳
図8 日本のリサイクル率はわずか27%!実際は大半を燃やす「焼却大国」なのです!

そこで、日本でもペットボトルからペットボトルを再生する完全循環型のペットボトルリサイクル施設が誕生しています。また、大手化学メーカーではトウモロコシやジャガイモ、大豆のデンプンなどを原材料にして、微生物の働きによって自然に還る「生分解性プラスチック」の開発を進めており、石油系のプラスチック素材そのものを減らすための取り組みが始まっています。

お話を伺ったのは

松本 真由美さん

松本 真由美さん
専門は環境・エネルギー政策論・科学コミュニケーション。研究テーマは、「エネルギーと地域社会との共存」「企業の環境経営動向(ESG投資、SDGsほか)」など、環境とエネルギーの視点から持続可能な社会のあり方を追求する。大学在学中から、TV朝日の報道番組のキャスターなどを経て、NHK BS1でワールドニュースキャスターとして「ワールドレポート」などの番組を担当した。2008年より研究員として東京大学での環境・エネルギー分野の人材育成プロジェクトに携わり、14年より現職。現在は教養学部での学生への教育活動を行う一方、講演、シンポジウム、執筆など幅広く活動する。政府の審議会・委員会の委員も務める。

2020年6月

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