知ってナットク!穀物のちから

人類が穀物を主食とするようになったのは農耕文化が始まったとされる約1万年以上も前のこと。なかでも小麦や大麦は人類最古の作物の一つといわれています。以来、様々な穀物が何世紀にもわたって私たちの生活と健康、そして文化を支えてきました。今や私たちの生活になくてはならない存在となった「穀物」。その特徴や魅力、取り入れたい健康パワーなどをご紹介します。

私たちの生活や健康を古くから支えてきた穀物

古代から、私たちの生活を支えてきた穀物。栽培が容易で収穫量が安定しており、長期保存にも適し、簡単な調理で食用にできるといった特徴があることから、古くから世界中で栽培されてきました。

穀物には様々な種類がありますが、特に生産量が多く「世界三大穀物」と呼ばれるのが小麦、米、トウモロコシ。穀物のうち、主食とするものを主穀、その他のものは雑穀と呼ばれています。穀物はでん粉や植物油、アルコールなどの原料として、また家畜の飼料などとして幅広く利用されています。

穀物の主な成分は、炭水化物(約70%)とたんぱく質(約10%)。主要なエネルギー供給源として重要な役割を果たしており、米を主食とする日本では、たんぱく質摂取量の約20%を穀物が占めるといわれています。

穀物の種類と特徴

穀物の特徴を詳しく見る

穀物は様々な栄養成分を含んでいることが長く愛されてきたゆえんの一つでもあります。例えば、小麦粉は表皮(ふすま、ブランとも呼ぶ)や胚芽を除いて製粉しますが、小麦の粒をまるごと挽いた全粒粉は食物繊維やミネラル・ビタミンが豊富なことから健康食品などにも利用されています。

また、豆腐や納豆、きな粉、味噌、しょうゆなどで日本人には馴染み深い食材でありながら、健康、美容、ダイエットの分野で注目を浴びているのが大豆。大豆は"畑の肉"と称されるほどたんぱく質が豊富なため、最近は大豆たんぱくを使用した大豆ミートのハンバーガーや惣菜なども頻繁に目にするようになりました。

それ以外にも、女性ホルモン様の働きをする大豆イソフラボンやコレステロール値を下げる働きのある大豆サポニンは、サプリメントにもよく取り入れられている成分です。

さらに、こうした穀物の栄養成分を飼料として鶏や豚、牛などに与えることで、健康的で栄養価が高く良質な肉や卵を生産することができます。穀物は私たちの豊かな食生活を支えてくれているのです。

穀物のちからを上手に取り入れ、健康でイキイキとした毎日を送ろう

ここ数年、糖質やグルテンのとりすぎを気にして穀物を必要以上に避ける方も多いのですが、穀物に含まれる炭水化物は、人間が生きていくために必要とされる三大栄養素の一つであり、体や脳を動かすための重要なエネルギー源です。

炭水化物が不足すると疲れやすくなったり、集中力が欠けて頭がボーっとするなどの不調が表れることも。炭水化物からつくられるブドウ糖は脳の働きに不可欠ですから、供給が過度に不足すると意識障害を起こすこともあり、日常生活に支障をきたす恐れがあります。過剰摂取は避けなければなりませんが、バランス良く取り入れて健康維持に役立てましょう。

また、オメガ3、6、9系脂肪酸を豊富に含んだ健康オイルを耳にすることが多くなったように、植物由来オイルの様々な機能も注目されています。私たちの生活で一般的なのは、ごま油や大豆油、コーン油などのオメガ6系オイル。コクがあるのが特徴で、料理の味に深みを出す効果もあります。

対して、健康のために積極的に摂りたいのがアマニ油に代表されるオメガ3系オイルやこめ油、オリーブオイルなどのオメガ9系オイルです。オメガ3系オイルは熱に弱いので、サラダなど熱を加えずに食べるのがおすすめです。

こめ油は抗酸化ビタミンの一つであるビタミンEが豊富で熱に強いため、揚げ物、炒め物など加熱する料理におすすめです。また、ハイオレイック種の種子を原料としたひまわり油はオレイン酸を含んだオメガ9系オイルで、こめ油と同様に酸化しにくく加熱に強いのが特徴です。

抗酸化作用をもつ栄養成分を含む食品をとることは、がんや生活習慣病、老化、免疫機能の低下などを招く、活性酸素の大量発生の抑制に役立つと考えられています。

知れば知るほど奥深い穀物のちから。穀物のちからを上手に取り入れ、健康的でバランスの良い食生活を送りましょう。

【参考文献】

お話を伺ったのは

藤橋 ひとみさん

藤橋 ひとみさん
I's Food & Health LABO.(アイズフードヘルスラボ)代表、管理栄養士。心身の不調を食事で予防、改善できる社会づくりに貢献することを目指して、フリーランスの管理栄養士として独立。商品開発やレシピ開発、コラム執筆やメディア出演、コンサルティング等、幅広く活動中。同時に、東京大学大学院にて医学博士取得を目指し、栄養疫学の研究に取り組んでいる。豆腐、豆乳、おから、ソイオイル、味噌、納豆など、大豆関連の資格を多数所有し、大豆や発酵食品・腸活分野の専門家としての活動にも注力している。著書に『おいしく食べてキレイになる!おから美腸レシピ』(ベストセラーズ)。

2021年9月

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