家庭のキッチンから始める食品ロス対策

まだ食べられるのに捨ててしまう「食品ロス」。そのうちのおよそ半分は家庭から出たものです。京都市の調査では、1世帯(4人家族)で発生する食品ロスは年間約6万円分にもなっています。「食材は"食財"。家庭の財産でもあるのです」という料理研究家の行長万里さんに、おいしく簡単に食品ロスを減らすために、食材を使い切るための料理のヒントをお聞きしました。

上手な保存で野菜をおいしく食べ切る

野菜を上手に使い切るには、保存方法にコツがあります。
「野菜は収穫後も成長しようとします。野菜に無駄なエネルギーを使わせて劣化を早めないためにも、基本は畑にあったときと似た状態で保存すると覚えておいてください」

大根やカブのように葉がついている野菜は、買ってきたらすぐに葉の部分を切り分け、別々にして保存し、葉に水分や養分が吸い取られるのを防ぎます。葉物野菜は冷蔵庫内でも根を下にしてペットボトルなどに立てて保存し、できるだけ早く使い切ることが大切。一度に使い切れない野菜は、冷凍保存するのも一つの方法です。

すぐに葉を落としたら、なるべく畑に植えられていたときに近い状態で保存

「キノコ類は石づきを取って食べやすい大きさに切り、そのまま冷凍保存袋へ。小松菜やピーマン、キャベツも食べやすい大きさに切って生のまま冷凍保存。使うときは解凍せずに使うのがコツ。冷凍すると火が通りやすくなるので、そのまま炒めたり、味噌汁に入れれば、水っぽくならず、時短調理にもなります」

ひと玉買うと余りがちなキャベツも冷凍なら無駄なく使える。ざく切りやひと口大など用途に合わせて切っておけば、ぐっと使い勝手がよくなる

残り野菜は「切る、煮る、揚げる」で使い切る!

ネギやニンジンなどの切れ端は、冷蔵庫の中で他の野菜に隠れて見失いがち。気付いたときには干からびていた......ということも多いはず。冷蔵庫内での"切れ端迷子"を防ぐためにも専用の保存容器を決めて、野菜の切れ端を入れて一緒に保存しておくのがお薦めです。さらに、保存容器を目につきやすいように冷蔵庫の手前に置くのもポイント!ブロッコリーの茎やナスのヘタなどもとっておき、調理に使いましょう。

保存容器内の乾燥が気になるようなら、ラップでくるんで保存を
アレンジは無限大、好みの味を見つけてみて

「残った食材の使い方に迷ったら、①切る(刻む)、②煮る(味噌汁やスープにする)、③揚げるのいずれかを試してみてください。例えば、ブロッコリーの皮やアスパラガスの軸の硬い部分、キャベツの芯なども、ちょっとした工夫で立派な一品に。献立のレパートリーも増えるし、節約にもなります」

~残り野菜の活用術(一例)~

  • 『切る』
    細切りにして、ごま油で香ばしく炒めてきんぴらに。味付けはポン酢でさっぱりと。
  • 『煮る』
    さいの目に切ってコンソメで煮てからミキサーにかけ、牛乳を加えて塩・コショウで味を調えれば、おいしいスープに変身!
  • 『揚げる』
    斜め薄切りにしてかき揚げにすれば、油のおいしさも加わって野菜の旨みが引き立つ逸品に。

専用粉や調味料は元の姿をたどって応用

市販の専用粉や合わせ調味料は便利な反面、使い切れずに残ってしまうことがあります。行長さんは、「専用という思い込みを外して、もともとは何からできているのかな?と考えてみて」とアドバイス。ポイントは、商品パッケージに印刷された原材料名をチェックすること。

「例えば、天ぷら粉には小麦粉や卵粉、ベーキングパウダーが使われているから、チヂミにしたり、牛乳やチーズをプラスしてパンケーキにできるのでは?と考えます。また、しゃぶしゃぶ用のごまだれにはすりごまや酢、砂糖が使われているから、余りがちな調味料の豆板醤と一緒に煮物の味付けに使えば、ごまの風味が効いた中華風の煮物になるかな?と。余ったら、原材料名を見て元の姿をたどってみると、いろいろな料理に応用できますよ」

原材料をチェック。アレンジ次第でおいしい定番料理が誕生することも

お話を伺ったのは

行長 万里さん

行長 万里さん
料理研究家。女子栄養短期大学卒業。料理学校の助手を務めた後、フリーで活動開始。料理教室講師やテレビ番組のフードコーディネーターとして活躍。1994年からイタリアに料理留学。『給料前のピンチを救う50円料理』(日テレムック)を出版。累計55万部。捨てる前に考える、使い方、使いまわし、食べ切り方法を提案し食品ロスに関する講演、料理教室を全国で展開中。

2019年4月